数学が始まる地点─区別できること
■ 私たちはなぜ「数学はいつも正しい」と信じているのか?
多くの人は、どこかでこう信じています。
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2+2=4 は、世界のどこでも絶対に正しい。
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どんな場所に行っても数学は同じ答えがでる。
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数学は常に正しく、どんな場合でも通用する。
たしかに、私たちの日常生活の中では、
数学はとても正確です。
だれが計算しても、「3」と「2」を足せば、必ず「5」になります。
* 買い物の計算
* 建物の設計
* 宇宙探査の軌道計算 ──
どれも数学や算数抜きでは語れません。
我々現代人の毎日の生活は、数学や科学のおかげで快適に暮らせています。
有難いことではあるのですが、ここで一つだけ問いかけてみたいのです。
「数学って、本当に“どこでも・いつでも”通用するのだろうか?」
でも、もしかしたら、
数学が成り立つためには、 普段の生活では気がつけない“前提条件” があって、
その必要条件がそろった場合だけ
うまく働くのかもしれません。
この記事では、その前提条件のうち、
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① 分離(Separation)
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② 等間隔(Uniformity)
という2つにしぼって、
できるだけ、分かりやすく考えてみます。
🔹 数学には「3つのレベル」がある
数学は、実は次の3つの層からできています。
● レベル0:前提(数学が始まるための条件)
数える・区別する・同一性・時間・因果・等間隔……
これらの「当たり前すぎて気づかない条件」が整わないと、数学そのものが成立しません。
● レベル1:基礎数学
自然数・整数・実数
足し算・引き算、証明、定理など
私たちが学校で習う“数学の基本部分”です。
● レベル2:理論(高等数学・物理学)」
相対性理論、量子力学、幾何学など
レベル1の基礎数学を材料にして構築される「高度なモデル」の世界です。
そして今回のテーマである 「区別」 は、
この最下層 レベル0(前提) の中でも、
特に重要な項目にあたります。
■ 前提① 分離 ― 「1」と「2」を分けられないとどうなるか?
まず、当たり前すぎて気づきにくいのが 「分離」 です。
私たちはふつう、
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「1」と「2」はちがう
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「私」と「あなた」はちがう
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この「机」とあの「椅子」はちがう
と、ごく自然に「区別」をしています。
でも、よく考えてみると、
数学はこの「区別できる」という前提がないと、そもそも始まりません。
* 1と2を、別のものとして区別し数えられる、
* 自分と他人、点Aと点B などを、区別することが出来る。
──その前提があって初めて、
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「1+1=2」という計算
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「点Aから点Bまでの距離」の測定
が可能になります。
1と2の区別がもし出来なければ、1と2を足すことさえも出来なくなります。
● インクと水のたとえ
透明な水槽の中に、水が入っているとします。
そこに、インクを一滴、たらしてみる。
最初は「ここがインク」「ここが水」と境界が見えますが、
やがてインクは、ゆっくりと混ざり合いながら、全体に広がっていきます。
そのうち、
どこまでがインクで、どこからが水なのか、
はっきり区別できなくなっていきます。
このとき、もし誰かに
「インクは、どこにあるのか正確に数えてください」
と言われても、混ざっているので不可能です。
なぜなら、この例の様に、物事の境界線がなくなってしまった状況では、
「これが1」「これは1ではない」という区別自体があいまいになるからです。
数学や算数が成り立つための最低限として、
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ここからここまでが「1」
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それ以外は「1ではない」
という “線引き” がはっきりしている世界や状況 である必要があります。
つまり数学とは、
ものごとが明らかに分かれて存在している(ように見える)世界 を前提にして
はじめて組み立てられた道具だと言えます。
■ 前提② 等間隔 ― なぜ「数字は等間隔で並んでいる」状態が必要か?
次に、数学や算数が成り立つために必要な性低条件(前提)が 「等間隔」。
数字と数字の間が等しい間隔で、ずっと並び続けていることです。
数直線を思い浮かべてください。
…… 0 | 1 | 2 | 3 | 4 ……
数字は、きれいに、等しい間隔で並んでいます。
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0から1までの距離
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1から2までの距離
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2から3までの距離
──どれも「同じだけ離れている」ということになっています。
ものの長さを測る定規・メジャーも、
同じ発想に基づいています。
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1cmごとの目盛りは、どこも等しい間隔
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10cmは「1cmが10個分」
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1mは「1cmが100個分」
この「等間隔」が崩れた瞬間、
数学や算数の計算の大部分は、たちまち動かなくなります。
● もし、1と2の間隔と、2と3の間隔がちがったら?
たとえば、こういう世界を想像してみてください。
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0と1の距離より、1と2の距離が長い
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2と3の距離は、気まぐれに伸びたり縮んだりする
このとき、
「1+1=2」
「2×2=4」
という式は、本当にそのまま通用するでしょうか?
1の「大きさ」や
数字の間の「間隔」が変わってしまうと、
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足し算や引き算
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掛け算や割り算
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距離や面積の計算
が、もう出来なくなります。
私たちが安心して計算できるのは、
数字が、まるで定規の目盛りみたいに
きれいに等間隔で並んでいる
という前提があるから
なのです。
言いかえれば、
“1→2→3→4…” が等間隔で続く世界 だからこそ、
方程式も、物理法則も、統計学も、経済予測も機能しているのです。
■ では数学の「前提が崩れる」とは?
ここまで見てきたのは、
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「分離」= ものごとをハッキリ区別できる
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「等間隔」= 数字の間の距離がどこでも同じ
という、数学や算数が成り立つための 最低限の条件 でした。
ではもし、
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インクと水のように、境界そのものが溶けてしまう世界
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数字の間の“距離”そのものが、場所や状況によって伸び縮みする場所
があったとしたら……?
そんな世界では、
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どこからどこまでが「1」なのか線引きできない
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「1」と「2」の間隔と、「2」と「3」の間隔がバラバラ
になり、
私たちの使っている数学は通用しません。
ここで言いたいのは、
「数学は間違っている」と言いたいわけではなく、
「数学が正常に働く世界には、はっきりした条件がある」
ということです。
数学は、
分離と等間隔という前提が守られている世界の中では、驚くほどよく働く。
しかし、その前提が当てはまらないのなら、
そこでは、別の「ルール」や別の「方法」が必要になるかもしれない。
数学や算数が可能になる条件や範囲があるということは、
その条件や範囲の外側、すなわち、「数学が通用しない外側の世界」も存在するかもしれない。。。
ということになります。
🔥 結論
数学や科学の土台を理解するための第一歩は、
その中身ではなく、「前提の前提(レベル0)」を見つめ直すことです。
数えること、区別すること、等間隔だとみなせること──
私たちが子どもの頃から“当然”と思ってきた条件が、
実は数学の世界を成立させるための不可欠な基盤です。
この事実を自覚すると、
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数学が扱える領域は、世界全体のほんの一部である
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数学は“絶対的真理”ではなく、“特殊状況で力を発揮する道具”である
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数学の外側には、もっと豊かな「質」や「意味」の世界が広がっている
という、健全な視点が育ちます。
そして、数学の議論ではほとんど触れられてこなかった
この「レベル0の前提」こそ、私たちの認識世界そのものを形づくる
もっとも根本的な枠組みです。
■ この先にある「もっと深い話」について
この記事では、
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「分離」と「等間隔」という、
数字が成立するためのごく基本的な前提 -
そして、
その前提が崩れる世界を、少しだけ想像してみること
を目的にしました。
より本質的には、
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数学がなぜ「人間の三次元的な意識構造」に依存しているのか
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非ユークリッド幾何学や相対性理論でさえ、なぜ三次元から抜けきれないのか
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「異次元は存在しない」のではなく、「存在しないことにされてきた」のではないか
といった、もう一段深いテーマがあります。
それらについては、別の記事
『数学には明らかな限界がある:数字が扱えない“外側の世界”とは何か?』
の中で、
4つの前提(分離・同一性・等間隔・因果)と
三次元意識・現代文明の在り方まで含めて、
より総論的に整理しています。
「数学の外側にあるかもしれない世界」や
「意識の構造との関係」に関心がある方は、
ぜひそちらもあわせて読んでみてください。


