レベル0からの数学論(第2回):すべての数学は「区別」から始まる

この記事では、数学が成立するための“レベル0”の必要な前提条件を2つ解説します。
今回は、数えることを可能にする「分離(区別)」と「等間隔」という二つの基礎の基礎を、分かりやすく考えてみます。

この記事は「レベル0からの数学論」シリーズの第2回です。
→ 第1回:レベル0からの数学論(第1回):数学とは何か?
→ 第3回:レベル0からの数学論(第3回):“同一性”と“順番”がなければ数学は成立しない

私たちはなぜ「数学はいつも正しい」と信じているのか?

現代の社会では多くの人が、普段はこう考えています。

  •  2+2=4 は、世界のどこでも絶対に正しい

  •  どんな場所に行っても数学・算数は同じ答えがでる。

  •  だから数学は万能である

たしかに、私たちの日常生活の中では、
数学はとても正確に働きます。

だれが計算しても、「3」と「2」を足せば、必ず「5」になります。

* 買い物の計算
* 建物の設計
* 宇宙探査機の軌道の計算 ──

どれも数学や算数抜きでは語れません。

我々現代人の毎日の生活は、数学や科学のおかげで快適に暮らせています。

有難いことではあるのですが、ここで一つだけ問いかけてみたいのです。

数学は“いつでもどこでも正しく、万能である”。

でも、もしかしたら、
数学が成り立つためには、 普段の生活では気がつけない必要な“前提条件” があって、

その必要条件がそろった場合だけ
うまく働くのかもしれません。

この記事では、その前提条件のうち、

  • ① 分離(Separation)

  • ② 等間隔(Uniformity)

という2つにしぼって、
できるだけ、分かりやすく考えてみます。

前回も書きましたが。。。。

僕自身、数学が得意ではありません。

でもそんな自分でも理解できる範囲で、できるだけやさしく説明していきます。

🔹 数学には「3つのレベル」がある?

数学を、まず次の3つの層に分けて考えて見ましょう。

レベル0:前提(数学が始まるための条件)

数えることができること
数字を区別できること
「同じもの」とみなす同一性があること
順番や時間の流れを理解できること
数字が等間隔で並んでいること……

こうした “あまりにも当たり前すぎて気づかない必要条件” がそろっていないと、
数学や算数そのものが成立しません。

レベル1:基礎の算数や数学

自然数・整数・実数
足し算・引き算、掛け算、証明、定理など
私たちが学校で習う“算数や数学の基本部分”です。

レベル2:理論(高等数学・物理学)」

相対性理論、量子力学、幾何学など
レベル1の基礎数学を材料にして構築される「高度な数学のモデル」の世界です。


そして今回のテーマである 「区別」 は、
この最下層 レベル0(前提) の中の一つ。


その中でも、特に重要な項目にあたります。

前提① 分離 ― 「1」と「2」を分けられないとどうなるか?

まず、当たり前すぎて気づきにくいのが 「分離」 です。

私たちはふつう、

  • 「1」と「2」はちがう

  • 「私」と「あなた」はちがう

  • この「机」とあの「椅子」はちがう

と、ごく自然に「区別」をしています。

でも、よく考えてみると、
数学はこの「区別できる」という前提がないと、そもそも始まりません。

* 1と2を、別のものとして区別し数えられる、
* 自分と他人、点Aと点B などを、区別することが出来る。

──その前提があって初めて、

  • 「1+1=2」という計算

  • 「点Aから点Bまでの距離」の測定

が可能になります。

1と2の区別がもし出来なければ、1と2を足すことさえも出来なくなります。

インクと水のたとえ

透明な水槽の中に、水が入っているとします。
そこに、インクを一滴、たらしてみる。

最初は「ここがインク」「ここが水」と境界が見えますが、
やがてインクは、ゆっくりと混ざり合いながら、全体に広がっていきます。

そのうち、
どこまでがインクで、どこからが水なのか、
はっきり区別できなくなっていきます。

このとき、もし誰かに

「インクは、どこにあるのか正確に数えてください」

と言われても、混ざっているので不可能です。

なぜなら、この例の様に、物事の境界線がなくなってしまった状況では、
「これが1」「これは1ではない」という区別自体があいまいになるからです。

数学や算数が成り立つための最低限として、

  • ここからここまでが「1」

  • それ以外は「1ではない」

という “線引き” がはっきりしている世界や状況 である必要があります。

つまり数学とは、
ものごとが明らかに分かれて存在している(ように見える)世界 を前提にして
はじめて組み立てられた道具だと言えます。

前提② 等間隔 ― なぜ「数字は等間隔で並んでいる」ことが必要か?

次に、数学や算数が成り立つために必要な性低条件(前提)が 「等間隔」。

数字と数字の間が等しい間隔で、ずっと並び続けていることです。

数直線を思い浮かべてください。

…… 0 | 1 | 2 | 3 | 4 ……

数字は、きれいに、等しい間隔で並んでいます。

  • 0から1までの距離

  • 1から2までの距離

  • 2から3までの距離

──どれも「同じだけ離れている」ということになっています。

ものの長さを測る定規・メジャーも、
同じ発想に基づいています。

  • 1cmごとの目盛りは、どこも等しい間隔

  • 10cmは「1cmが10個分」

  • 1mは「1cmが100個分」

この「等間隔」が崩れた瞬間、
数学や算数の計算の大部分は、たちまち動かなくなります。

もし、1と2の間隔と、2と3の間隔がちがったら?

たとえば、こういう世界を想像してみてください。

  • 0と1の距離より、1と2の距離が長い

  • 2と3の距離は、ランダムに伸びたり縮んだりする

このとき、

「1+1=2」
「2×2=4」

という式は、すぐに通用しなくなります。

1の「大きさ」や
数字の間の「間隔」が変わってしまうと、

  • 足し算や引き算

  • 掛け算や割り算

  • 距離や面積の計算

などの小学生の算数も出来なくなります。

私たちが安心して計算できるのは、

数字が、まるで定規の目盛りみたいに
きれいに等間隔で並んでいる
という前提があるから

なのです。

言いかえれば、
“1→2→3→4…” が等間隔で続く世界 だからこそ、
方程式も、物理法則も、統計学も、経済予測も機能しているのです。

では数学の「前提が崩れる」とは?

ここまで見てきたのは、

  • 「分離」= ものごとを常にハッキリ区別できる

  • 「等間隔」= 数字の間の距離が常にどこでも同じ

という、数学や算数が成り立つための 最低限の条件 でした。

ではもし、

  • インクと水のように、境界そのものが溶けてしまう世界

  • 数字の間の“距離”そのものが、場所や状況によって伸び縮みする場所

があったとしたら……?

そんな世界では、

  • どこからどこまでが「1」なのか線引きできない

  • 「1」と「2」の間隔と、「2」と「3」の間隔がバラバラ

になり、
私たちの使っている数学は通用しません。

ここで言いたいのは、

「数学は間違っている」と言いたいわけではなく、
「数学が正常に働く世界には、はっきりした条件がある」
ということです。

数学は、
分離と等間隔という前提が守られている世界の中では、驚くほどよく働く。

万能だと普段は考えている数学でも、数学や算数が可能になる条件や範囲があるということは、
その前提が崩れる領域では、数学は突然その力を失います。

数学や算数が成立するための条件や範囲が明確に存在するということは、

特定の条件が整った範囲だけで働く“限定的な道具”にすぎないということです。

言いかえれば、
数学が通用する世界の外側には、
数学の前提が成り立たず、数学という道具では扱えない領域がある──
そう考えることもできるのです。

🔥 結論

数学や科学の土台を理解するための第一歩は、
数学がすでに普通に働いている中での数学についてではなく
その「前提の前提(レベル0)」を見つめ直すことです。

数えること、区別すること、等間隔だとみなせること──
私たちが子どもの頃から“当然”と思ってきた条件が、
実は数学の世界を成立させるための不可欠な最低条件です。

この事実を自覚すると、

  • 数学が扱える領域は、世界全体のほんの一部である

  • 数学は“絶対的真理”ではなく、「特殊な状況の中」で力を発揮する道具である

という、健全な視点が育ちます。

哲学の世界では、カントや現象学をはじめとして、
「人間が世界をどう認識できるか」というレベル0の議論は、
認識論の中では、長い歴史の中で深く掘り下げられてきました。

しかし不思議なことに、

数学そのものが成立するための“土台の条件”を
数学の側から体系的に考え直す試み
は、
ほとんど行われていない様です。

だからこそ、いま私たちが行っている作業──
数字の世界の前提をいちどゼロから見つめ直すことは、

  • 数学に大きく依存する現代社会の構造そのものを問い直すこと

  • そして現代社会が無自覚のまま見失ってきた“深い土台”に向き合うこと

につながっていきます。

「レベル0を見つめ直す」という作業は、
数学を否定するどころか逆に、
数学をより広い文脈に“正しく位置づける”ための第一歩 でもあります。

* この記事は「レベル0からの数学論」シリーズの第2回です。
→ 第1回:レベル0からの数学論(第1回):数学とは何か?
→ 第3回:レベル0からの数学論(第3回):“同一性”と“順番”がなければ数学は成立しない